ピロリ菌
ピロリ菌
ヘリコバクター・ピロリと呼ばれ、胃に住みつく細菌です。通常の細菌は、胃酸によってヒトの胃で生存することが困難ですが、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を分泌し、胃酸を中和することで胃の中でも生存が可能な細菌です。ピロリ菌が住みつくと胃粘膜に炎症が起こります。慢性的に炎症をきたすことで、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの病気を引き起こすといわれています。
ピロリ菌の感染経路は正確には分かっていません。
幼少期の免疫が不完全な時期に感染するといわれ、水道などの衛生環境や家庭内感染が原因といわれています。
感染しても、自覚症状がないことがほとんどです。
ピロリ菌は胃がんや胃潰瘍などの深刻な病気を引き起こす可能性があるため、できるだけ早期の発見・治療をお勧めしています。
胃がんは昔に比べると減少してきています。食生活の変化など様々な要因があります。
ピロリ菌の早期発見・治療が行われるようになったことは大きな貢献です。
がんの早期発見・早期治療により生存率が大きく変わります。
様々な慢性胃炎の分類がありますが、ピロリ菌は中でも萎縮性胃炎を引き起こします。胃酸の分泌を行う細胞がやせ衰える状態です。萎縮性胃炎は加齢でも起こります。
除菌を行うことでピロリ菌がいなくなり、持続的な炎症が無くなり粘膜の発赤やむくみなどが消失します。ただし長年変化した跡や、加齢による萎縮は残ります。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは、胃酸によって胃や十二指腸の壁が損傷している病気です。
悪化すると出血や穿孔(穴があくこと)をきたします。
潰瘍治療後の1年後の潰瘍再発率は8割以上と高いですが、ピロリ菌が原因の胃潰瘍・十二指腸の場合に、ピロリ菌を除菌することで1年後の再発率が1割程度に減少するといわれています。
胃の組織を採取して、ピロリ菌が作り出すアンモニアによる反応を試薬で調べます。
その他、鏡検法や培養法などがあります。
※ピロリ菌のみの検査は保険適応となりません。胃カメラ(内視鏡検査)による胃炎や胃潰瘍等の確定診断が必要となります。
検査用のお薬を飲んでいただき、一定時間経過した後の息(呼気)にピロリ菌の反応が出るかを調べます。体への負担が少ない検査です。
ピロリ菌に感染していると体の中に抗体ができます。血液や尿を採取してこの抗体の有無を調べます。人間ドックなど健診で広く行われていますが、問題点としてはピロリ菌に感染していなくても陽性と結果が出る(偽陽性)場合があることです。ピロリ菌除菌後もしばらく抗体価が上昇していることがあり、除菌後の判定には不向きです。
便中のピロリ菌の抗原を調べます。体への負担がない検査です。
下記の疾患を除菌治療の対象とし、胃内視鏡検査でピロリ菌感染の胃粘膜所見の場合は、ピロリ菌検査によって確定診断を行います。
服薬による除菌治療を行います。2種類の抗生物質と1種類の胃酸を抑える薬を1日2回(朝晩)服薬します。除菌によって、70~80%以上の方が除菌に成功します。
※ピロリ菌のみの検査では除菌治療は保険適応となりません。保険適応の除菌治療には、胃カメラ(内視鏡検査)が必要です。
除菌後、8週間以上の日数を空けて再度ピロリ菌検査を行い、胃除菌が成功したかを判定します。
ピロリ菌の感染と胃がん発症は大きく関係しているため、ピロリ菌の除菌治療を行うことで、胃がんの発症リスクを軽減することが可能です。ただし、除菌治療を行っても胃がんのリスクがゼロになったわけではありません。除菌後の方は胃粘膜の萎縮が残るため、もともとピロリ菌がいない方に比べると、胃がんの発生頻度が高いことがわかっています。また、胃がんの原因はピロリ菌だけでなく、塩分の過剰摂取や喫煙、食生活とも密接に関連しているといわれています。ピロリ菌が陰性であっても、胃がんを早期の段階で見つけるためには、定期的な胃カメラ検査が重要です。
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